こんにちは。長崎県・五島列島にある新上五島町で特産品のカンコロ餅やふくれまんじゅうなどを手作りしている〝花野果〟です。
〝花野果〟と書いて〝ハナヤカ〟と読みます。
今から14年前、私たちの先代である島の元気な女性たちが、「野菜や果物など島の恵みを使って特産品を作りたい」と、この名前を付けました。
上五島のおばさんたちは、とても器用です。
昔はなんでも自分たちで作ったそうです。各家庭で食べるおやつも手作り。ポテトチップスもドーナツもかりんとうも、お母さんたちが作っていました。初代花野果のメンバーは、そんな昔ながらのおやつを島の特産品にしようと、長年取り組んできました。
もう一つ、花野果には大きな使命がありました。
島の人たちが作った「カンコロ」で、カンコロ餅を作ることです。
私たちの住む上五島は起伏に富んだ地形で、農地はほとんどが段々畑。肥沃な土が少なく、昔からサツマイモがたくさん作られ、主食として食べられていました。しかしサツマイモは寒さにとても弱く、地下に掘った蔵に貯蔵しても、多くが腐ってしまいます。そこで昔の人たちは、サツマイモを薄く切って茹で、冬の乾いた北風に当ててカラカラに干して貯蔵し、その干し芋を再び水で戻し、加工して食べていました。
この干し芋を五島列島では「カンコロ」と言います。
カンコロをもち米、砂糖と一緒に蒸してつきあげたものを「カンコロ餅」と呼び、当時は大変なご馳走だったそうです。
島では今でも、サツマイモを栽培し、カンコロを作る人がたくさんいます。しかし、カンコロ餅を作るには、機械や人出が必要です。高齢化や過疎化で人が減った現在、年の瀬に家庭でカンコロ餅をつく風景がどんどん減ってきています。
「島を離れた子どもたちや親戚に、家でついていた昔ながらのカンコロ餅を送りたい」。そんな島の人たちの思いに応えてきたのが、先代の花野果でした。カンコロを持ってきたお客さんの注文に応じて、砂糖やもち米の配分を変えたり、水飴やごま、生姜を入れたりして、オリジナルのカンコロ餅を作っていました。
年を重ね、還暦を過ぎ、カンコロ餅作りが負担になってきても辞められなかったのは、地元の人たちからの「また来年もよろしくね」という声があったからでした。
親族でもなく、その土地に生まれた訳でもない移住者の私たちに、「後継ぎをしてほしい」と声をかけてくださったのも、カンコロ餅を加工する場所をなくしてはならないという切実な思いがあったからだと思います。
私たちは、手先が器用でも、お菓子作りが趣味でもありません。
それでも後継ぎを決めたのは、先代の花野果を支えてきた、山添さん、海辺さんの思いを引き継ぎたいと強く思ったからです。
そして、この島の歴史が詰まった、この島ならではのカンコロ餅を、少しでも先の未来に残していきたいという思いがあったから。何より、カンコロ餅が大好きだったから。
そんな、いろんな思いを胸に、私たちは今日、2代目花野果としてのスタートを切りました。まだまだ先代のように、カンコロ餅もふくれまんじゅうも上手にはできませんが、先代を愛してくださったお客様に出しても恥ずかしくないように、真心を込めて商品作りに励んでいます。
五島列島にお越しになった際には、島の素材を使った昔ながらの花野果のお菓子を、ぜひ味わってみてください。
今後は、島外のお客さまにもお買い求めしていただけるよう、出荷先を増やしたり、インターネットで購入できるようにしていきたいと思っています。
未熟な二人ですが、末長く愛される花野果を目指して日々精進していきます。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
2018年4月1日
2代目花野果
岡本幸代、竹内紗苗
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