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  • 執筆者の写真2代目花野果

「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の世界遺産登録について思うこと。

観光客と帰省客で島の人口が1.5倍(くらい?!)に増えるゴールデンウィーク真っ只中、さなえ&さっぴぃはひたすらかんころ餅やふくれまんじゅうを作りつつ、配達をしたり、商品を売っていただける場所を探しては営業に出かけたりと、日々奔走しております\(^o^)/


そんな中、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界遺産に登録されることが決まりました!!!!

「潜伏キリシタン関連遺産」は、江戸幕府がキリスト教を禁じていた17~19世紀、250年にわたって長崎県と熊本・天草地方でひそかに信仰を守り続けたキリシタンが育んだ独特の文化や伝統を指します。島原・天草一揆の舞台となった原城跡(長崎県南島原市)や、信仰を集めた平戸の聖地と集落(同県平戸市)など12件の資産で構成されていますが、その1つに、私たちが住む新上五島町にある「頭ヶ島集落」も含まれているのです!

(奥にあるのが頭ヶ島天主堂です。国内ではとても珍しい石造りの教会です)


(外観はどっしりとしていて荘厳な雰囲気ですが、教会の内部は花の装飾がたくさんほどこされ、パステル調の優しい造りになっています。10年の月日をかけて建てられた、この集落の先祖の方々の思いが詰まった教会です)



世界遺産登録ですが、実は「やっと!」というような高揚感はほとんどありません。安堵感でもなくて、ちょっと寂しいような、結局どうでもいいような…複雑な気持ちです。


私(緑の方です)は3年前の2015年夏に上五島に移住したのですが、その時は「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」として国連教育科学文化機関(ユネスコ)に推薦され、翌年の世界遺産登録を待つような状況でした。しかし、2016年2月にイコモスというユネスコの諮問機関から申請内容の不備を指摘されたために推薦が取り下げられ、昨年2月に「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」と名前を変え、構成資産も12件に絞って新たに推薦書を提出し、今回ようやく世界遺産への登録が決まったのでした。


構成資産の1つである「頭ヶ島集落」は、8世帯の民家があり、信者の方々に守られている立派な教会があり、海水浴のできる美しい砂浜(ほぼプライベートビーチ!)があり、BBQができる憩いの場がある、静かで、島の人たちにとっても親しみのある場所でした。


「世界遺産」になるために、頭ヶ島天主堂のある集落へ行くには島民でもシャトルバスを使わなくてはいけなくなりました。たくさん観光客が訪れるようになって、観光地らしくなって、少し遠い存在になりました。


江戸時代にキリスト教が禁止され、弾圧の恐怖に怯えながらも先祖から受け継いだ信仰を守り抜いたという歴史や、禁教下で育まれたカクレキリシタンという独自の文化は、世界に類を見ない、保存されるべき歴史文化だと思います。だけど、なんだか違和感を感じるのは、そういう光と闇を抱えた日本のカトリックの歴史文化そのものがフォーカスされるのではなく、象徴的な場所である教会などが世界遺産ということで「観光名所になる」からなんだと思います。


世界遺産への推薦が取り消されたり、また推薦されるために申請書が書き直されたり、文化を保存するためという名目で観光客受け入れ整備が進められたり、そんなやりとりが続く中で、なんのための「世界遺産」なんだろうという気持ちが大きくなりました。


もちろん、世界遺産が決まれば観光客がきっと増えるでしょうし、そうなれば島全体が潤うかもしれません。公共工事が減り、過疎化が進むこの島にとって、経済的には大きな希望なのでしょう。


でも、本当に素晴らしいのは、今も信仰を守り抜いているカトリック信者の方々の心だったり、集落から人が減っても助け合いながら教会を掃除している信者の方々の姿だったり、今も隠れキリシタン時代の風習を続けている人たちだったり、そんな祈りの文化が息づくこの島の日常や人々の心の中にある、目には見えないものだと私は思います。だから、観光地として整備された今の頭ヶ島集落を訪れただけでは、〝世界遺産〟を感じることは難しいのではないかな…と思うのです。


私たちが受け継いだ「かんころ餅」や「ふくれまんじゅう」も、潜伏キリシタンの歴史や文化と深い関わりがあります。観光客の方々がこの島に来て、世界遺産を感じていただけるように、食文化を通じて、後世に残すべきこの島の歴史を伝えていけたらと強く思います。



「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が正式に世界遺産に登録されるのは、6月24日の世界遺産委員会です。せっかく世界遺産になるなら、人々の記憶にとどまるような遺産になりますように。


まだまだ新米の島民なのに、わかったようなことを書いてすみません。でも、世界遺産の登録が決まって、なんだか手放しでバンザーイって感じにはなってなくて、その気持ちに向き合いたいなと思って綴りました。でも一つ、世界遺産登録を受けて確信できたのは、この島は、島民みんなで力を合わせて残していかなければならない島なんだということ。世界のお墨付きをいただけたのは、とても大きなことだと思います。自分たちのためだけじゃなく、この島のためにも頑張ろうと、気合いを入れ直しました。



ここまで読んでくださり、ありがとうございました。また明日から、ゆるゆる書いていきます。でもたまには、こんな真面目な文章にもお付き合いいただけると嬉しいです。

頭ヶ島集落のカトリック墓地では今、マツバギクが咲き誇っています。一年で一番美しい季節です♫


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